ターグルリコイル

ターグルリコイルの新たな可能性

カイロプラクテックはD..D.パーマーによって1895年9月18日に命名され誕生しました。当時、磁気治療師をしていたパーマーは、黒人の召使いハービーリラードの脊柱に隆起(コブ)をみつけて施術したところ隆起が動き、リラードの患っていた耳の障害が治ったことではじまりました。
D.D.パーマーは、先見性と行動力があり、多岐にわたる勉強をしていたそうです。彼は、1874年に創始されたオステオパシーのセミナーにも参加していたそうです。この当時のオステオパシーのセミナーの内容の詳細はわかりません。ただ、スティルは解剖学に精通したドクターであり、皆に電光石火の治療師、魔術師と言われていた二つ名の肩書から憶測すると瞬間的に局部に刺激をいれて施術していたのではないか?と思われます。オステオパシースティルテクニックという本の中で紹介されているテクニックは主に長テコ技法ですが、たんに、テコをうまくつかって施術していただけではないようです。スティルはヒーラーという一面もあったようですから。
スティルの右腕であり、スティルの学校で生理学をおしえていたリトルジョン(ヨーロッパとくにイギリスのオステオパシーの発展に寄与した人物でクラシカルオステオパシーの創始者)は、この長テコ技法を好んで用いたそうです。リトルジョンは生理学的な身体変化を重要視したため、スティルと対比して論じられますが、スティルから受け継いだものを大切に守っていこうとしていたそうです。

クラシカルオステオパシーの実践者であるクリスキャンベルとクリスバッテンに国際セミナーで直接話す機会がありました。その時、彼らの師であるワーナム先生やリトルジョンについていろいろお聞きしました。キャンベルはオステオパシーの学校の第一期生らしく、バッテンの先輩にあたるようでした。ワーナム先生はリトルジョンの忠実な実践者でとても厳しかったようです。また、様変わりするオステオパシーの現状を憂いていたようです。オステオパシーがその独自性を薄め、哲学に重きをおかなくなり、小手先のテクニックや投薬、オペをするようになっている今のオステオパシーを激しく非難していたようです。
このように、かなり強い保守派なワーナム先生の意思を継いだキャンベルも伝統技法を大切にしていました。国際セミナーの時にキャンベルの施術を見学しておりましたら、仙骨に長テコ技法を加えた後に、仙骨にトルクと圧迫を加えてリリースさせる瞬間がありました。キャンベルは右手だけで行っていましたがリコイルに似ていると思いました。リコイルに回旋をつけくわえるような、身体の使い方をしていたように見えました。質問するとキャンバルは「仙骨の靭帯をリリースするやり方のひとつである」と答えてくれました。

YOUTUBEでBJパーマーがアジャストしているのをみたことがありますでしょうか?びっくりしなかったですか?アジャスト後、患者が激しく上下にうごいていましたよね。力の強いアジャストメンなのかな?暴力的なのかな?と推測しませんでしたか?
BJパーマーはアジャストメントについて、いろいろ注意事項を述べています。アジャストは、突いてはいけないし、力まかせでもいけない。弱く触れるだけのものでもいけない。アジャストにはエクストラサムティングが必要だと。そしてアジャストにはスピードがいると、このような言葉を彼は残しています。

ターグルは、両肘を約140度付近に曲げ、蝶番式に動く両腕からなります。片方のタバコ窩と、もう一方の手の豆状骨をあわせて手首をしっかりと固定します。

リコイルは、クライアントの身体の内部の抽象的な力の反応であり、身体の弾力性において発生するイネイトによる振動性のシステムの動きです。

突然ですが。質問です。ターグルリコイルで主に使う筋肉はどこでしょうか?
上腕三頭筋と大胸筋であると教わりませんでしたか?

ターグルで構えて、上腕三頭筋を使うと肘は当然伸びてきます。肘が伸びてくると、ターグルでとった施術者の形はくずれます。また、肘を伸ばせるということは、手首の固定ができていないことを意味します。この時のターグルリコイルをスローモーションで見ると、見事に突き押しになります。BJのアドバイスにしたがわなければいけません。突いてはいけません。

突かないターグルで使う筋肉は、ハムスト、腹直筋、小円筋、大円筋、上腕二頭筋、回内筋、回外筋です。
動きとして重要なのは、肩甲骨と胸郭の動きがスムーズになるようにする事です。腹直筋(丹田の力)をうまくつかって、胸郭をさげる必要があります。肩の力を抜き、胸をはり、おもいっきり呼気をすると胸郭はさがります。
体幹は腰椎を伸展させて股関節だけを屈曲させる形になります。ハムストリングスにかなりの負担がかかりますので、支える力を身につける必要があります。例えるとゴリラが前屈して手をブラブラしているような感じです。
また、緊張している筋肉があると、スピードのあるターグルリコイルはできません。特に上肢はリラックスしていることが大切です。カイロプラクティックハンドも患者に接触した瞬間に、緊張を緩める事が望まれます。術者の緊張は患者を緊張させます。

ニーチェストスタイルはBJがつくり、そしてシャーマンにより発展させられた技術のスタイルです。ただ、当初BJがやりはじめたニーチェストのスタイルは悲しい事に純粋なBJのスタイルとしては残らなかったようです。現在では、当時のBJのスタイルに近い事がやれるBJスペシャルというベッドは再販されていますが。

カイロの歴史を振り返るときに、ベッドや道具といった形あるものは大切な生き証人のようなものです。それらは真実を秘めています。カイロは手の技術により施術する徒手施術ですが、それを補うものを軽視することはできないと私は感じています。大切な思いがこもった道具は、自分の手足と同じなのではないでしょうか?

ちなみに↓の写真の台ですが、ターグルリコイルの練習台です。黒い天板が固いゴム(タイヤのゴムのような感じ)になっています。練習で腹直筋、小円、大円筋、上腕二頭筋を鍛えます。肘で小円を描くことができるようにする。手首のスナップを効かせるようにする(小指を振る感じ)。カイロ手は緊張しすぎていてはいけない(緊張は最初のコンタクトの瞬間だけ)。

腹筋を収縮させる(丹田のエネルギーを発生させる)。そして大円、小円筋を収縮させ、連動させるように上腕二頭筋の収縮をおこさせ、肘が屈曲し、腕が胸元にもどる。この時、同時に脊柱が左右の肩甲骨の中に落ちると自然とボディードロップする。ターグルリコイルはスピードが大切なので、怠りなく身体を鍛えていく事が必要だそうです。

BJが言った「エクストラサムティングのあるリコイル」を再現するためには、腕を突かない(三頭筋をつかわない)、腕を引かない、体で押し込まないが大切な鍵かもしれません。

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